瀬戸内海に浮かぶ
「豊かな島」で視たこと考えたこと
 第2期ビジョンづくり委員会委員長
桂   健 治


 はじめに


 豊かな島と書いて「てしま」と読みます。文字通り豊かな自然と心を持つ人々が住む豊島に産業廃棄物が不法投棄され、兵庫県警により摘発されたのは今から14年前の1990年のことです。テレビや新聞でも大きく報道され、豊島は「ゴミの島」、「毒の島」として全国に知られるようになりました。
 私たち第2期ビジョンづくり委員会では、「環境」に取り組む企業で働く一員としての立場、そして持続可能な社会づくりに取り組む地球市民としての立場の両面から、自分自身にとっての「環境ソリューション」とは、そして10年後の「環境」について幅広く考えることをテーマに本年3月から10月までの予定で活動を行っています。第4ステージとなった今回は、豊島の不法投棄現場を自分の目で視ることにより、大量生産、大量消費、大量廃棄と続く経済推進のあり方や、めざすべき持続可能な循環型社会のあり方について考えてみることにしました。




 「豊島」について


 豊島について簡単にご紹介します。豊島は瀬戸内海の東部、小豆島の西方約4キロメートルの海上にあり、面積は約14平方キロメートル、周囲は約20キロメートルで、香川県では小豆島に次ぐ大きさの島です。国立公園に指定されているだけあって、豊島から望む瀬戸内海はどこからでも絵になるといっても過言ではありません。島内には東洋一のオリーブ園といたるところにみかん畑があります。
 戦後は農業、林業、漁業、石材業が盛んで3000人を超えていた人口は、約1300人にまで減少しています。米の豊かな産地だったことに由来する豊島の名前にもかかわらず、いまでは至るところに空家や休耕田があり、65才以上の人の占める高齢化率も47%と高く、香川県平均の約2倍となっています。



 豊島事件の経緯


 国内最大級ともいえる廃棄物不法投棄事件の経緯についてまとめてみたいと思います。

[1]不法投棄(1978年)〜強制捜査(1990年)
 1978年2月に香川県が豊島の処理業者(豊島総合観光開発梶jに対して産業廃棄物処理業の許可を与えたことからこの事件は始まりました。処理業者は有価物と偽って、シュレッダーダスト、廃油、廃酸、廃プラスチック、汚泥などの廃棄物を豊島に持ち込みました。不法投棄だけでも危険でしたが、公然と野焼きが続けられたため、ダイオキシンなどの有害化学物質が発生し、国際環境保護団体のグリーンピースは豊島を有害物質による汚染が世界で最も深刻な12の場所の1つに掲げました。この不法投棄は1990年11月に兵庫県警が処分地を強制捜査したことでようやく終わりましたが、約50万トンの有害物質が豊島に残されました。

[2]県とのたたかい(1990年)〜廃棄物島外撤去の決定(2000年)
 不法投棄を行った処理業者が刑事責任を問われたことは言うまでもありませんが、処理業者を指導、監督する立場にあった香川県当局が特別な責任を問われることになりました。県当局はこの処理業者を取り締まるどころか、シュレッダーダストなどを廃棄物ではなく金属回収の原料とみなし、これらを焼却して金属を回収しているから廃棄物処理法による許可は不要であるなどとして、この不法投棄に手を貸したからです。
 豊島住民はこの処理業者が香川県知事に対し、豊島での事業許可を申請した当初からこれに反対して立ち上がりましたが、許可を阻止できず、次いで県当局に不法投棄の取締りを求め続けたが、聞き入れられず、兵庫県警の強制捜査によってようやく不法投棄が停止したのちは、放置されたままの廃棄物の島外撤去を県当局に拒否されました。そのため、住民のたたかいは25年もの長きにわたり、膨大な時間と労力と費用をかけることになりましたが、ついに2000年6月、豊島を元どおりの美しい島にするために、すべての廃棄物を島外に撤去させることを県に認めさせました。また、知事はその非を認めて、住民の前で謝罪しました。

[3]廃棄物処理方法の検討(2000年)〜廃棄物無害化処理の開始(2003年)
 廃棄物の島外撤去が決定した後、具体的に廃棄物の移送場所と処理方法を検討した結果、2000年3月に廃棄物を香川県直島へ海上輸送し、焼却・溶融処理することが決定しました。また、豊島の処分地において、周辺地域への汚染の拡大を防止するため、2001年3月に暫定的な環境保全工事として、北海岸での遮水壁の打設、廃棄物の移設および不法投棄現場への透気・遮水シートの敷設が行われました。
 その後、豊島において2003年3月に廃棄物の中間保管・梱包施設が、4月に高度排水処理施設が、直島において2003年9月に中間処理施設(焼却・溶融施設)が完成し、廃棄物の無害化処理が本格的に稼動しています。50万トンを超える廃棄物は今後約10年かけて処理が行われる予定です。


中間保管・梱包施設/特殊前処理物処理施設   中間処理施設


 本を読んで予習をしました
教材「豊島産業廃棄物不法投棄事件:大川真郎著」


 現地を視察する前に、まずこの事件の経緯を勉強しようということで、私たちはこの事件の豊島住民弁護団副団長であった大川真郎弁護士の著作である「豊島産業廃棄物不法投棄事件……巨大な壁に挑んだ25年のたたかい」を読んでみることにしました。この本の前書きには次のように書かれています。

はじめに
 豊島産業廃棄物不法投棄事件は、わが国最大規模の不法投棄事件といわれている。
 この不法投棄は一廃棄物処理業者によって、国立公園の中で、10年もの間公然と行われた。
              (中略)
 兵庫県警の強制捜査からほぼ3年が経過した1993年11月、住民の依頼により著者らが弁護士としてこの事件を引き受けたとき、廃棄物の島外撤去を求める住民の要求は道理にかなったものと理解しつつも、大量の廃棄物をどこに、どのようにして処理するか、県にこれを行わせることができるかについて、何の見通しも立たなかった。処理業者はすでに撤去する意思も資力も持たなかった。
 しかし、住民と弁護団は、懸命にたたかい続ける中で、少しずつ撤去の実現に向かって展望を切り拓いていった。
 本書は、僅か1400人の住民が、どのように権力の「巨大な壁」に挑み、勝利したかを明らかにしたものである。

 25年にも及ぶこの事件の経緯を弁護士の立場で冷静に、かつ客観的に書きとどめた本書を読んで委員会のメンバーは様々なことを感じ取ったようです。メンバーの感想文を紹介したいと思います。

矢 吹   亮
(東京ブロック)

 この本を読むまでの不法投棄についてのイメージは一部の悪質な産廃業者による問題であるというものでした。しかしながら、読み進めていく中で、産廃業者・地方自治体・国・排出事業者という様々な事業体が複雑にいりくんでこの問題が起きているということを知りました。
 また、この不法投棄は今起こっている様々な環境問題の典型的な例であり、単なる対岸の火事ではなく、自分自身も少なからず関わりのある事件であると感じました。豊島の不法投棄された廃棄物は、なんとか処理・復旧へと動き出しましたが、大量生産・大量消費という根本的な原因についてまだまだ取組が十分でないという大きな問題が残っています。つまりはリサイクル化の徹底やゴミ自体の排出量を低減する活動をしていかない限り、廃棄物の処分場は不足し新たな不法投棄を招くという現象はなくならないということを意味すると思います。ただ自分自身の現実問題に置き換えてみると、今の生活から離脱し、リサイクルの徹底・ゴミの排出を抑える生活に急激に切り替える事は非常に難しいため、まずは小さなこと(ゴミの分別の徹底など)から取り組んでいくしかないのではと思います。廃棄物の問題を含めた環境問題は明確な解決策がとりづらいものですが、一人一人が意識を改革していけば、問題解決への第一歩になると思います。今回この豊島の不法投棄の本を読む事によって、自分自身の意識改革へのきっかけの一つになったと感じています。

佐 伯 敬 久
(播磨ブロック)

 この事件の経緯の中でホント役人って嫌な生き物だな〜とつくづく感じた次第です。何で、こうも頭が悪いのか、お前らの給料は住民の血税なのだという意識なんて微塵もないのだろうな、と感じました。今回の事例なんて、結局は氷山の一角でしかなく、まだまだ日本のあちこちでバカ役人に苦しめられている健全な日本国民がたくさんいると考えると、何となくやりきれない気分です。このままで日本は大丈夫なのだろうかと率直に感じます。その一方で、自らが生きるために体を張って、この大問題に一致団結して香川県と戦い抜いた島民の皆さんのパワーには心から感服するばかりです。勝利したとはいえ、まだまだ問題山積しているはずでしょうから、今回の研修で少しでも島民の方々が抱える苦労を知り、これから日本が進むべき道を自分自身、考えられたらと思っています。

真 鍋 善 行
(本社ブロック・三重出張所)

 現在のように環境保護がさけばれておらず、廃棄物の危険性の認識が低かった時代ではあるが、産廃処理場の反対運動が「住民エゴ」というような捉え方をされていたのは、なんともやりきれないのではないでしょうか。島の環境が年々悲惨になっていくさまを読んでいると、当時の島の状況が本当に恐ろしいということがよく分かります。住民の方々は、本当に恐ろしい日々を過ごしたのだと思います。大規模な野焼きが山火事と見間違うほどに大きくなり、その煙と悪臭が島全体を覆う…すでに人が安心して生活できるレベルではないことがこの文章からすぐ読み取れます。子育ての環境にも最悪です。自分にも子供がいますが、豊島のような環境で夜な夜な咳をして眠らなかったり、喘息になったりしたら気が気じゃないと思います。自分の子供(子孫)には、きれいな環境ですくすく育ってほしいですもんね! 住民の子孫に対する強い思いが実って本当によかった。豊島問題は解決したけれども、他の場所でも同様のことが起こっているのではないかという気がしてなりません。中国や東欧は、経済発展の代償として豊島のような犠牲を払っていないか? 日本だけでなく、地球規模での環境保護が必要だと思います。豊島問題を教訓に、仕事を通じて地球の環境を守ってゆきたい。

戸 嶋 大 輔
(東京ブロック)

 豊島の産業廃棄物不法投棄については、以前からテレビなどを通じて不法投棄事件が発生していることを知っていたが、この本を読んで初めて全体像を理解することができた。産業廃棄物を不法に投棄した豊島観光が一番の問題ではあるが、実際の処理現場、実態を十分に調査もせず有機産業廃棄物処理場の許可を与えた香川県も問題である。著書を読む限り、香川県は豊島観光と馴れ合いの関係をもっており、責任の否を認めたくないが故に少数の住民を犠牲に見て見ぬ振りをしていたとしか思えない。そういった中、豊島の住民は、建設許可が下りる前から反対運動をして島の危険を感じていた。たとえ、有機産業廃棄物処理施設の建設を許可するにしても、県は調査等が必要であったし、建設後も定期的な調査が必要であったと思う。しかし、こういった産業廃棄物の問題が発生したのは、大量生産、大量消費という社会的な問題も抱えている。本文中にあった「使い捨て社会の被害者はいつも過疎地。都会から不法に運び込まれた廃棄物」という言葉がすごく印象的であった。確かに、大量消費しているのは、過疎地より都会であり、恐らくゴミの発生は都会の方が圧倒的に多いと思う。
 現在社会でも、大量生産、大量消費は続けられているが、リサイクルということも行われている。しかし、リサイクルは大切なことであるが、リユースや無駄なものは生産・消費しないことが重要であると思う。最近、新聞で直島の処理施設について読んだが、この処理施設は豊島の多くの人々の努力のもとで実現した施設であることを思うと複雑な気持ちである。処理施設も大切ではあるが、その処理物が発生しない、少なくとも発生しにくいものの生産・消費を考えていかなければならないと感じた。

坂 本 憲太郎
(大阪ブロック・九州支社)

 私は今回この著書を読んで恥ずかしながら日本国最大規模の不法投棄事件の全貌を知りました。今まさに公共事業を請け負う立場で仕事をしている者(私)として豊島観光が公然とやってきた不法投棄は言うまでもなく許されないことだと感じました。確かに高度経済成長の真っ只中に多く色々なものが作られ便利になり国家反映のために良かったのですが、その反面で誰かが処分しないと都会ではゴミが溢れてしまうような事になったのも事実だと思います。その急速な日本の成長の実態に国の行政や香川県が法の整備も含めて適応できなかった事が問題だった(いいかげん)と私は思いました。別に悪徳業者の味方ではありませんが、極論もし自分が豊島観光の社員で仕事として「都会のゴミを片付けている」=「ゴミ問題解決に係る貢献」としての思いを持って働いて自らの生活(家族)を支えているのであれば立場的にはしょうがないと判断して今と同じような思い(絶対反対)をもって間違った行動として判断し会社を去る勇気があるかまで考えさせられました。当時は廃棄物処理技術やその他環境問題の抑制(大気汚染、森林伐採等)においては表向きではなかったのでしょうけど、後回し(問題先送り)的な発想が大いにあったのではと推測されます。現に排気ガス規制によりディーゼル車の減少対策(特に自家用)、家電リサイクル法の適用、家庭ゴミの分別(リサイクル)収集も最近の事であるのが事実であるように。
 今後は前述からのような環境問題が起こらないのは当たり前で、私たち「環境問題解決企業」が直接活動し影響を与える立場である事とそれらに取り組む意義と責任を改めて感じる事のできた著書でした。

福 田 智 宏
(本社ブロック)

 環境保全に対する問題であり、また、住民が国に起こした訴訟で住民側が勝訴した、という数少ない事件で興味のある内容であった。住民の皆様は25年もの間、本当によく頑張られた。行政には、今後同様の問題が起こらないようにしっかりした状況判断で業者の監視をしてもらいたい。また、政治家を選ぶのは一般市民であり、政治家に悪事を働かせないように監視するのも市民の役目である。市民もしっかりした目で行政を監視していきたい。
 不法投棄の問題は全国に大小さまざまな形で起こっている。周囲の人たちや地球全体の環境には目を向けないで「今の自分さえ良ければいい」という人間のエゴが生む問題であり、人間の根本的な考えを正す必要がある。直接的には不法投棄の業者とそれを許した行政が悪かったわけではあるが、一般市民の生活を含めた産業廃棄物を生み出す人間社会自体も見直すべきとも言える。まずは自分自身の生活を見直してみることも必要、と考えさせられた。行政は市民の生活を良くしようとさまざまな事業を推進するが、時としてその内容が住民の意図と反する方向に向かっていることがある。雇用の問題を解決するために、地球の環境を破壊していることもある。公共事業に依存している面のある当社としては、広い視野で見て本当に地球環境のためになる設備を納めているか、ということを再度確認して間違いなければ自信を持って拡大していきたいと思う。

永 野 竜 規
(研究所ブロック)

 まず初めに、これだけ大きな事件であったにもかかわらず、ほとんど概要を知らなかったというのが本音です。ニュース等で報道もされていたと思いますが、ほとんど記憶に残っていません。このような認識は私だけでなく、日本国内でも大勢居るのではないでしょうか。つまり、一番の当事者である豊島近隣の人々にとってはシビアな問題であり、解決すべく様々な運動をおこなっていたものの、周囲の関心が薄く、その結果、問題解決まで25年もかかったと考える。大きな問題となった豊島でさえこのような状況であることを考えると、昨今、地球温暖化問題をはじめとする環境問題がクローズアップされているが、この問題を深刻に受け止め、日常の生活で行動している人はどの程度いるのか疑問に思われるところです。今回、本書を読んで非常に恐いと感じたのは、不法投棄によって周辺環境が汚染され、最終的に自分たちの口に入る食物も知らず知らずのうちに汚染されているという事実です。
 私のように、他で起こっていることに対して無関心でいることのしっぺ返しが豊島に現れ、最終的にここまで大きな環境災害になっている。
 環境汚染として様々な現象が起こっているにも関わらず、それを認めず、行政として何もしなかった香川県や、不法投棄を行ってきた業者に対し唖然とするが、関心を持たなかった我々も同罪である。
 これを教訓として少しでも環境問題に目を向ける様にしたいと感じた。尚、一度汚染された環境をどこまで回復させることができるのか、豊島の今後に期待したい。

山 崎 幸 司
(本社ブロック)

 今回、この「豊島産業廃棄物不法投棄事件」という25年にわたる住民の不法投棄された廃棄物との戦いを拝読し、まず、その年月の長さに驚きました。私は現在28歳ですが、ほとんどその人生の長さと変わらない年月だったからです。その長い時間の中で本当に多くの活動を行なわれた事、また、その戦いは他の誰でもなく、そこに住んでいる一般住民自身の戦いであった事は、私たちが平素当たり前の様に感じている「環境」がいつ誰の手によって破壊されるかも知れない、そしてそれは自分自身かも知れないという現実について改めて考えさせられるものでした。運動の中で行われたローラー運動や、ビラ配りといった地道な活動が、調停成立への大きな原動力となった事から、住民全体の意識の向上が重要なのだと再認識させられました。世界の人間の大多数が戦争に反対しているのに、いつも地球のどこかで戦争が起きている。環境問題にもそういう所があるのかも知れません。だからこそより多くの人が高い意識を持ち、考え続けていかなければならないと思います。私の友人が、「瀬戸内に豊島・直島という島があって、とてもいい所だから一度皆で遊びに行こう」と言っていた事を思い出し、住民の皆さんの「美しい島を取り戻したい」という気持ちや行動を通して考えると、正に素晴らしい島であったと実感しています。今回のエコツアー楽しみにしています。

棚 橋   誠
(本社ブロック)

 私はこの豊島の不法投棄問題についてほとんど知見がありませんでした。当時問題が取り沙汰されていた頃の豊島に関する記憶はなく、ゴミ浸出水処理場の業務をする中で、耳にした程度です。本を読んでまず思ったのは、県の対応や経営者等の姿勢です。県は問題を理解しておりながら黙認し、住民からの訴えよりも問題の縮小化に努める姿勢がまざまざと記されており、県・行政の対応の心のなさを感じました。豊島の件だけでなく、昨今のニュース・報道でも同様な住民の訴えに対する行政の事務的処理振りが目にとまります。そういう体制の改善がなければ、どの問題に対しても解決に互いが相当な労力と時間を要する結果となると思われる。国定公園でありながら産業廃棄物不法投棄を黙認する、他県県警の踏み切り捜査による発覚、業者とのつながり……これらは豊島だけでなく、日本のいたるところで、表にはでない現状を指している。今回この本を読んで、このような問題に対する「このようにしたら」であったり、不法投棄に対するビジョンはあまり見えませんでしたが、そのような問題の中で二十数年間も戦い続け、認められた戦いがあったという歴史がわかりました。

奥 村 敬 典
(東京ブロック)

 豊島の産業廃棄物不法投棄事件を読んですごく面白かった。というのは産廃を不法投棄する業者については現在も多分同じような人がいると思われ、「悪い奴だ」と普通に思いながら読んでいたが、香川県の対応については考えられない対応であると感じた。私が産廃について業務を通じて知るようになったときは既に不法投棄、産廃処理に関してかなりうるさくなっており、同書のような県の対応は考えられないと思った。話をおもしろくするためにかなり誇張して書かれているのではないかとも思ったぐらいであった。問題が始まったのが私の生まれた年であり、解決されたのがほんの4年前であるのでこの間にかなり日本での産廃に対する意識が変わったのだと感じた。そういう意味では豊島の事件は日本の産廃意識にかなり影響を与えたと思う。現在では法律も厳しくなり、まず香川県のような対応はないとは思うが、産廃の種類は増えて処理も難しくなっていると思うのでまだまだうまく不法投棄している業者がいるのも現実であると思う。処理業者の責任がやはり一番大きなところであるとは思うが、やはり排出する業者がきちんと責任をとった事もあまりクローズアップされていなかったが大きいと思った。この本のような事は、産廃の適正処理が議論されるのではなく、産廃がでない社会を作る方法を議論するのが今後大事であると思う。

上古閑 久 欣
(本社ブロック)

 豊島問題が世間に認知され、廃棄物処理が社会的に重要な問題になってきたとき(90年代半ば)、私はちょうど大学生活を送っていました。そして、就職を考え出した頃(90年代後半)、大気汚染防止法の改正、ダイオキシン類対策特別措置法等の法規が整備され、私が注目してきた企業では、いままで「グローバル化」「IT」などがキーワードだったのが「環境」というキーワードに変化してきました。
 今回参考図書を読み、世間が「環境問題」に注目するようになった発端として「豊島問題」があることを改めて認識しました。この事件に関する最大の問題は、行政の廃棄物に関する認識の甘さが挙げられます。豊島住民の23年に及ぶ戦いは、行政のこの認識を改めさせる戦いであり一定の勝利を得ましたが、この戦いが、世間の「環境」に対する認識を改めさせ、1自治体だけでなく国も動かしたことは驚異だと思います。70年代という廃棄物問題など認知されていなかった時代に、豊島住民が行政に対して行った戦いは価値あるものだと思います。
 現在、法規制も進み産廃問題に対する社会の関心も高まっている中、逆に産廃の不法投棄は増加し、なくなっていません。循環型社会の構築は理想ではありますが非常に難しく、企業・住民・行政それぞれの役割の中で、目標に向かってできることを模索しつづける必要があると思いました。

二階堂 宏 央
(研究所ブロック)

 この本を読んで、島民の健康と住環境を守るために立ち上がり、解決困難な状況下から相当な努力により、業者や県、国に打ち勝った関係者に対して賞賛の気持ちで一杯です。ただ、今回の豊島のような産廃不法投棄問題を解決するには、関係者の努力と時間が必要であることがよくわかり、このような問題をすぐに解決できないこの国の制度(システム?)には大変失望しました。今回は、住民の生活を守るべき立場である行政側(香川県)が、自分たちの立場を守るために積極的に問題解決の努力をせずに逆に住民と対立していたことに怒りを覚えました。
 また、不法投棄によって汚染されたサイトを修復するためには、莫大なお金と時間がかかることがよくわかりました。特に直島での処理施設は、産廃をただ無害化処理するだけではなく、極力リサイクルするとの一歩進んだ思想には賛成であり、産廃を処理するのは大変難しいですが今後の状況に関心を持って見ていきたいと思います。しかしながら、修復するための費用は私たちの税金が使われ、汚染した側の産廃業者はほとんど負担しない(できない)現状は問題であると思いました。今のままでは不法投棄した者勝ちであり、不法投棄は一向に減らないと思います。今後このような問題が起きることがないよう、法律や行政のシステムを変えていく必要があると思います。また、ごみを排出する側の私としても、ごみの排出を抑えることに努めることにより、産廃の不法投棄の問題を解決できるよう協力していく必要があるのではないかとも思いました。

村 上 義 則
(本社ブロック)

 豊島の事件については、処理がうまくいっておらず、溶融炉で小規模の爆発があった事は知っていたが、それ以前に起きていた事については本書を読むまで知らなかった。産廃処理について十分な検討をせずに処理業者に許可を出し、他県が介入するまで不当な処理を黙認し続け、更に裁判中も終始責任逃れを続ける県当局に憤りを感じた。同時に、自分のためではなく島の未来のために長く険しい戦いを続け、勝利を手に入れた住民に感動した。 
 最近、他の地域でも同様のことが起きていることを小耳に挟んだが、この事を教訓として、地方や国は法や社会基盤の整備を、企業は技術力の向上を、そして国民は意識の向上を図る必要性を感じた。

黒 岡 達 男
(本社ブロック)

 豊島の問題は、入社するまで知らなく、入社後も表面上しか知りませんでした。自分自身がごみ処理分野で仕事をしているため、豊島に表面溶融炉ですごく大きい溶融炉が納入される! という程度しか知らなかったのです。しかし、本書を読むに当たり、より豊島問題が深刻で且つ環境問題のはしりであったということを再認識しました。実際に県を相手とし、そして勝利を勝ち取ったという住民のパワーと、簡単に環境を破壊し、美しい島を汚してしまった産廃業者に憤りを覚えました。産廃問題をはじめ、環境問題は人間にとって切っても切れない問題であると考えます。私が感じた点は、環境を汚した人間も悪いが、それを作ったのも人間であるということを忘れてはならないということです。作ったものをどのように処理するのかが問題であり、今回の問題はその処理過程が不法投棄等で問題になったということです。従って、豊島問題という一事件だけを見るのではなく、環境問題という広い視野で見た場合、処理する側の立場の理解も必要であると考えます。

◇◆◇

 ほとんどのメンバーは、豊島問題について「知っているがよく知らなかった」という認識だったようです。その解決に至るまでに25年もの歳月を要した「不法投棄」の問題が、悪質業者の責任によることはもちろんですが、行政の対応や法律の問題など様々な要因が絡み、本質的には大量のゴミを排出する大量生産・大量消費という社会のシステムそのものに起因していることに、多くのメンバーは問題意識を持ったようです。
 たった一冊の本ですが、基本的な情報は頭にインプットした上で、いよいよ現地を訪問することにしました。


豊島に行ってきました


 7月3日(土)、梅雨明けを思わせるような猛烈な暑さの中、参加者15名は岡山駅に集合しました。路線バスに約1時間揺られ宇野港まで向かい、瀬戸内海の小島をつなぐ水上タクシーで約30分、水しぶきを浴びながら豊島の家浦港に到着しました。
 家浦港では、廃棄物対策豊島住民会議の多田さんが視察団の一行を出迎えてくれました。豊島交流センターの会議室で概要の説明を受け、多田さん運転のマイクロバスで不法投棄現場の視察に出発しました。
 違法業者による産廃不法投棄が始まって強制捜査が入るまでの十数年間で、何と50数万トンの有害廃棄物が島外から持ち込まれ、多田さんの話では「核廃棄物以外は何でも埋まっています」とのこと。現在では投棄現場一面に遮水シートが貼られ投棄されたゴミそのものは覆い隠されていますが、その面積の広さと周辺の豊かな自然との不釣り合いさは何とも異様な光景として目に映りました。


写真右側が不法投棄で問題となった豊島北海岸

投棄現場には遮水シートが

ドラム缶は内容物の検査を行い番号管理

 公害調停成立後、暫定的な環境保全措置工事が行われ、どす黒い水と異臭が漂い「死の海」と化していた北海岸も、汚染水の流出を止める深さ18メートルの遮水壁が350メートルの長さで敷設されたことにより、きれいな海岸線へと戻りつつあります。
 昨年、ようやく中間処理施設が稼働し本格的な処理が始まりました。50数万トンの産廃と汚染土壌の処理には、今後10年の歳月が必要で、設備費と運転費用など総額500億円もの巨費が投じられることになるそうです。


死の海からよみがえった北海岸で説明を

昔の自然豊かな「豊島」にもどすことが
島民の願いと語る多田さん
バスの運転をしながら片手にマイクを持って説明する多田さん

 今回、私たちを案内してくれた多田さんは、県外でサラリーマンをしていたのですが、数年前に実家である豊島にUターン。現在はイチゴ農園を経営しながら、全国から来る見学者の案内役を行っています。「豊かな島と書いて『豊島』です。水量が豊富であるため、かつては稲作も盛んで、とくに豊島で採れるミカンは高品質であることから高値で取引されていました。しかし、ゴミ問題での風評被害は深刻で豊島産というブランドは市場で通用しなくなりました。また30年前には3000人いた島民も、現在では1240人と半分以下に。65歳以上の高齢化率も47%と高齢化と過疎化の問題も深刻なものとなっています。今、豊島にもっとも必要なことは、以前の自然豊かな島『豊島』にまずは戻すことであり、その中で農業や漁業の振興を図っていくことだと思います。」と多田さんは語っていました。

積み上げられた不法投棄物の断面
 その後、マイクロバスで島内を一周し交流センターに戻った一行は、廃棄物対策豊島住民会議に古くから中心メンバーとして参加してこられた前川さんの話を聞きました。「豊島の中学生が修学旅行で福岡に行った際、『君たちはゴミの上を歩いて毎日学校に通っているんだって』と言われたんです。子どもたちにいつまでもそんな思いをさせたくない。これが島民の思いであり住民会議の活動の原点です。」と前川さんは語っていました。
 駆け足となった豊島での視察を終え、一行は水上タクシーで豊島の隣に浮かぶ直島へと向かい、翌朝、直島に建設された中間処理施設を見学し岡山へと戻りました。

豊島視察団
(本社ブロック)
(播磨ブロック)
(研究所ブロック)
(東京ブロック)
(事  務  局)
上古閑久欣、黒田剛志、小林俊幸、杤木 博、山崎幸司
佐伯敬久
金谷 優、永野竜規、二階堂宏央
奥村敬典、戸嶋大輔、矢吹 亮
関谷久之、井上育也、桂 健治


住民会議の前川さんを囲んで


豊島に行って視たこと考えたこと


 たった二日間の駆け足の見学でしたが、「百聞は一見にしかず」、視察団のメンバーは実に多くのことを感じ考えました。自然の豊かさのみを追求しゴミの島外撤去を実現させた豊島の人々。中間処理施設を誘致し、そのこととの因果関係は定かではないものの少なくとも豊島との比較において経済的な豊かさと発展が散見できる直島。メンバーの率直な感想を紹介します。
実際に豊島を訪れて住民会議の方の生の声をきいて、今までの(事前に関連著書は読んだものの)認識は甘いものだと思いました。住民会議の皆さんの話を聞けば、自分の周りでいつ起こってもおかしくない問題だということがわかるし、おそらく神戸方面からでた産廃も豊島に運ばれていたはずで、日本ひいては世界的問題と実感しました。
豊島、直島の島としての差は、そのまま資本主義経済と地球環境問題の矛盾を示しており、今後の大きな課題ではないかと思います。
不法投棄という言葉をよく耳にしますが、実際の不法投棄現場に足を運んだのは今回が初めてです。最初豊島に船で乗り付けたときあまりにものどかな島であることにまず驚かされましたが、本当に驚いたのは豊島の良い面でなく悪い面でした。というのも車で案内していただいた島の裏側はのどかな場所はなく、自然が悲鳴を上げているような閑散とした干からびた土地でした! 大自然には不釣合いな近代的な施設とビニールシートで覆い隠された産業廃棄物の山……。私として変わり果てた自然の惨めさに絶句してました。なぜ一人のエゴのために島人・豊島が犠牲にならなくてはいけないのだろう。なにより腹立たしかったのは、豊島に産業廃棄物を持ち込んだ本人は、事件当初法律で罰則に対して定められていなかったため50万円の罰金だけで済んだということでした。この一人の男のために大自然がめちゃくちゃに破壊されたのだと思うと悔しい気持ちになります。厳しい法律ができてからは、このようなことをする人は少なくなってきたと思いますが、今後ないとも限らないので国には産業廃棄物不法投棄により目を光らせるとともに地方には行き届いた指導をしてほしいと思います。


不法投棄現場のすぐそばに建つ資料館で

訪問したときには、既に埋め立てや整備がされていたので、そこに不法投棄がされていたことは見た目には分からない状態となっていましたが、その当時の写真や樹脂で固めた廃棄物の展示品、廃水処理の原液の臭いを嗅いだりするとやはりこの場に異様な廃棄物が存在していることが分かった。感想というと、なぜこのような状態になるまで県は放置していたのかということになる。豊島で起こったことを今、表ざたになっていない不法投棄現場を抱える自治体にもよく理解していただき第二の豊島を作らないように先手を打っていただきたいと思う。県には大量にある廃棄物を一日でも早く処分させ、豊島を豊かな自然あふれる島に再生させて島の人が誇れる島に戻していただきたいと思う。
実際に不法投棄現場を視て感じたのは、既にシート敷設等の処置がなされていたので、先に大川先生の著書を拝読させていただいた時に感じた壮絶さはあまり感じませんでした。しかし、豊島のあの風光明媚な環境の中であの場所だけがぽっかりと文明のしわ寄せに遭っていた事実には、非常に違和感を感じました。あの入り江の海水があそこまで黒くなっていた場面を想像するだけで気分が悪くなります。溶融処理を含め、爆発事故等もあり、情報公開、管理の徹底等問題はある様ですが、早く処理が終わると良いと思います。そして、処理が終わった後は、環境のモニュメントとして、この事件がどうして起こり、どのような経緯で産廃が撤去、処理されたのか、ずっと語り続かれていくことを祈っています。
私たちが訪問したのは、すでに産廃の処理処分が進行中であったため、不法投棄現場もシートで覆われており、表面上はここで史上稀にみる悲惨な事件がおきたという実感は沸きませんでした。しかし、現場を説明していただいた多田さんをはじめ、地元の方の話を聞くうちに、これらの廃棄物を適正に処分されているかをよく監視することが必要であるとの認識を持ちました。さらに、これらの廃棄物がすべて撤去、処分された後に、この現場を、この豊島をいかに再生していくことが重要であり、また一番難しい課題であると感じました。いまだ「これにて一件落着ではなかった」ことを認識できたのが一番の収穫でした。
合法的であったとしても、最終処分場はあまり気分のいいものではありません。ましてや不法投棄の現場であれば、なおさらです。よく撤去までこぎつけることができたな、という感じです。現場見学説明の中で、「急速に発展した自動車の廃棄物が豊島に集まった」といわれていました。いまとなっては、自動車のない生活も成り立ちませんし、先代が追い求めた豊かさとは違う何かを、私たちの世代は築きあげなければならないでしょう。物質的な豊かさと表裏一体である廃棄物を、極力発生させないことが大事であると強く感じました。
廃棄物を処理する最も安価で、安全な方法かどうかわかりませんが、あんなにお金をかけなくても……と思いました。

北海岸には深さ18m、長さ350mの鋼矢板製遮水壁が打設された

皆の会話の中でもあったが、日本における不法投棄への罰則は厳しいものではない。そのため、罰金以上に稼げるとすると、不法投棄業者は減少することはない。これらの業者に依頼する周囲の業者を含め、取り締まることを考えていく必要がある。また、これらの不法投棄を見逃してきた行政に対しても、今後は責任を追及し、行政自体にも罰則を与える必要があると思う。
今回わざわざ土日を使ってビジョンづくり委員会の一環として豊島・直島の見学に行きましたが、普段は不法投棄現場や産業廃棄物処理場を直接見ることができないため参加してみることで良い経験ができたと思います。今回、不法投棄を行うことでどのような悲惨な結末(環境・自然破壊)が待っているのかがわかりました。一度果ててしまった自然はなかなか戻ってきません。我々は便利さを求めるあまり、不必要なものを排除しようとします。その不必要なものを押付けられたのが豊島という島だったのでしょう。私の上司が過去に言った言葉で、「見て見ぬふりは同罪やで!」といった言葉があります。私たちは、普段業務中でも慣れ親しんでいる人にはそれがダメとわかっていてもついつい言いにくかったり、言わなかったりすることがあります。言いにくいかもしれないですが注意していれば事故は起きなかったのにという場面に遭遇するかもしれません。事故が起きてしまえば言わなかった方にも少しは問題があるのです。今回の豊島事件の発端もこのような些細な注意ができなかったことだと思います。今回の豊島問題を発生させた人は、住民にもお構いなしに殴ったりする人だったのだと聞いておりなかなか注意することが大変だったと思いますが、何かその時にアクションを起こしていれば変わったのじゃないかと思います。豊島を参考例にするのは話はかけ離れている気もしますが、私たちの会社が「自然環境との共生・調和」を理念とする以上、環境への負荷軽減を果していないものは初期段階で必要ない(ダメなものはダメ)とお客にでもはっきり提言できる会社にしたいと思います。部署によってお客に対する接し方はいろいろあると思いますが、私が所属している部署では常にこのことを念頭に仕事に取り組んでいきたいです。
実際に豊島に行っての感想は、豊島は非常に美しく、ゆったりとした雰囲気であると感じました。それだけに本当にこの島で不法投棄という事件が起きた事が信じられない思いです。また、処理現場は思ったよりも異臭等はせず、見た感じでは処理は確実に進んでいると思いましたが、処理完了後の処理現場の活用方法が決まっていない事や、農産物等の風評被害など今後の課題は多数あり、豊島問題の本当の意味での解決まではまだまだ道のりは長く、険しいと感じました。
人間が出したゴミで苦しむ人と、そのゴミを処理することで生活を営む人がいるのが何とも皮肉な感じでした。
豊島の不法投棄現場も有害物の拡散を防ぐための防止処置が重装備でなされており、また、直島での処理施設の豪華さ見て、そこまでの設備が必要であるかという疑問を持ったが、一企業の悪行により島民が持った不信感を払拭するためには致し方ないのかという感想を持ちました。ただ、不法投棄に対する行政への不信感の他に、ごみや産業廃棄物を安全に処理するための技術に対しても不信感を島民はもたれており、我々としてもごみ処理施設が住民の皆様から認められるよう努力を継続していく必要があると感じた。
 また、つい施設の豪華さに目が行ってしまったが、この豪華な施設の建設費用と処理費用で合計500億円近い血税が投入されることを思うと、一部の業者の悪行を国民が尻拭いする現状のシステムは絶対変えるべきであると思います。


「ただ豊島の子どもたちの未来のために」と語る住民会議、前川さん

今回の見学で訪れた豊島では、「豊かな自然を後世に残そう」とがんばってこられました。その考えには大いに共感でき、私がこの仕事を選んだ理由の一つでもあります。「そのために何が必要か」常に考える姿勢を忘れないでいきたいと思います。これ! という解決策はないと思います。長い目でこつこつといまの立場で最善を尽くすことで、道が開けるものと思っています。
正直に言うと、豊島と直島の町をみてすごい差を感じました。差とは、勝手な思い違いかもしれませんが、町の雰囲気が違ったように感じた。豊島は県の被害者の町で雰囲気的にすごく寂しく感じた。それに比べ、直島は豊島に比べ多少活気がある町に感じた。島の人も言っていたが、県は被害が発生している町には風評被害による補助金などは一切支払わず、まだ発生していない直島の風評被害の保証金を払っていることにすごく疑問を感じる。これが楯突いた町と県に手を差し伸べた町の差であるのかは分かりませんが、これからも豊島は県から突き放された状態になるのか心配です。
考えていた以上に50万トンのゴミは多量であり、不法投棄を行ってきた業者はもちろん、これらの不法投棄を堂々と見過ごしてきた行政に対して強い反感を覚える。中間処理施設を受け入れた直島と受け入れなかった豊島とでは、県の対応も違うとのことであったが、先に立って指導していく立場の行政がこのような状態であると、今後も(既に起きているが)、各地で同様の問題が起こると思わざるを得ない。

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 見学を終えたビジョンづくり委員会メンバーの感想は、一市民としての不法投棄に対する憤りだけではなく、「環境プラントメーカー」で働く一人としての目線から使命感にもとづく決意のような声も多く聴かれました。ここでそのいくつかを紹介したいと思います。
豊島、直島にある処理施設は非常に立派で、輸送船も周辺環境に配慮されたものでした。しかし、香川県は「環境に配慮した施設」を県内外にアピールしたいのか、必要以上に立派すぎ豊島住民の戦いからは乖離した非常に違和感のあるものでした。「循環型社会」というキーワードは、環境装置を売っていくときの売り文句の一つです。が、その資源再生装置(少なくとも汚泥焼却)自体が化石燃料を使用し、電気、水を使っています。膨大なコストをかけてできたものが、路盤材に使う石やセメント原料ではあまりにお粗末な気がします。エコタウン事業は立派だし、リサイクル事業の保護も立派ですが、同時に月並みですが廃棄物がでないような法整備等考えなければいけないことは自明です。我々は廃棄物を処理する装置を売っているメーカです。ごみがどんどんでて、汚水排水がどんどんでて、法規制が強化されればおそらく会社は儲かりますが、それでは「循環型社会」の構築はできません。「モノ」が廃棄物になる前の段階から、一連のサイクルで考えなければならない問題だと思います。「資本主義」「金儲け」と「環境問題」は相反しないというのが「ビジョンづくり委員会」のテーマの一つでした。それぞれの立場もあり、【答え】なんてものはないのでしょうが、これからも考えていきたいと思います。
環境装置メーカーの従業員にとって環境を通じて社会に貢献する、即ち「循環型社会の構築」は非常に重要な取り組みであり、積極的に参画していかなければいけない社会形成の場であります。しかしながら循環型社会を構築していくがあまり盲点になっていることがあります。その理由は、廃棄物の量を確保しなければ施設の稼働率が上がらないということです。皮肉にも稼働率を上げるための行動を行うということは、本来「循環型社会の構築」する上で優先事項である「廃棄物を発生させない」という考えに相反しています。生産された廃棄物を持ち込まなくては直島のエコタウン事業は経済的に成立せず、直島の住民は潤いません。私個人的には、出すより出さない努力、即ち廃棄物を発生させないことを進めるような努力をしていきたいと思います。
大量に発生する廃棄物を資源として循環させるためには中間処理は必要不可欠であると思います。ただ、この中間処理に対する住民の皆様の不信感はかなりあります。この不信感を払拭するためにも環境装置メーカーの従業員である我々としては、トラブルがなく安全で環境負荷をかけない装置を提供できるよう努めなければならないと思います。今回の豊島では、施設の操業状態を情報公開することにより不信感を取り払うようにしているが、我々が保有している技術もこの情報公開に耐えられるような技術にしていかなければならないと思います。また、装置以外でも、循環型社会の構築の手助けとなるようなビジネスの創出や提供といったソリューション活動も活発にしていく必要があるのではないかとも思います。
一市民としては、一番簡単な分別ゴミをすることであるが、一装置メーカーとしては、自治体などによって分別されたゴミをどれだけ低コストでリサイクルできるかを考えていかなければならない。分別されたゴミも大金を掛けて処理しているようでは、不法投棄が発生することは目に見えている。従って装置メーカーは、より低コストで容易に処理できる機器を開発する必要があると考えます。
このような問題を二度と起こさない様に意識を高く持つことは勿論ですが、環境メーカーとして、現在の社会でどんな環境リスクがあるか把握し、それを技術的に解決できるようにしなければいけないと思います。統合によりリスク回避、管理ができる商品メニューは揃っているのではないでしょうか?
昨今の企業がらみの事件、不祥事を見るにつけ、いかに情報開示が大切であることを感じています。適正な時期、方法を持って情報開示を行うことが企業の努めだと考えます。

かつては野菜を洗ったり水遊びをしたり地域の人たちの憩いの場であった唐櫃の清水

資源のない日本は、資源を大量に輸入して、加工して輸出するという構造のなかで、急速に経済発展を遂げました。しかしお金はたまっても、人の体で例えれば、食べ過ぎで肥満状態といえるのではないでしょうか。たくさん食べれば、たくさん排泄物も出ます。太れば大きな服も必要です。食べすぎを改めダイエットしないと、循環型社会はみせかけで終わってしまう気がします。PETやプラのリサイクルも、大金をかけてリサイクルしています。おかしいと思う感覚を多くの人が身につける必要があると思います。
環境装置メーカーの従業員としての立場でできることには限界があると思います。上部団体である業界団体や、研究者、国、NGOなどともっと話し合う機会をもち、ベクトルをあわせていくことが最優先だと思います。
豊島のような不法投棄問題が起こらぬよう、まずは発生するゴミの量を減らしていく事がもっとも大事な事だと思います。そのためには、ゴミが極力でないような社会へと少しずつ変わっていくように、グリーン購入やゴミの分別の徹底など身近な事を一人一人が行っていく事が必要であると思います。また、環境装置メーカーの従業員としては、まずはゴミの問題等の環境問題について知りえた情報を周りの人々にも伝え、問題についてより真剣に向き合う社会へと結びつけていきたいと思っています。
現場を案内していただいたすべての方々にまず感謝を申し上げます。環境に関する問題は机上で議論するのも大切ですが、現場で感じたことをもって行動に移すことが一番重要であると思います。今回、本見学に参加したことにより、さらに廃棄物問題に対する認識を深め、環境保護に一歩でも手助けできる仕事を行っていきたいと考えます。
豊島・直島の処分施設を見た正直な感想はものものしい施設だと感じました。(ゴミの処分場という事で、周りの目を気にした過剰にクリーンな設備になっていると思いました。)今回の豊島の問題でも、莫大な費用がかかるということが、解決への道のりが遅くなった一因だと言えると思います。立派な設備は、環境問題への意気込みの象徴としては大きな意味を持つと思いますが、日本全国で様々なゴミ問題を抱える現状を考えると、今後はもっと実利的な施設を作っていく態勢へと変換する必要があると感じます。
最近の猛暑でエアコンがバカ売れする一方で、エアコンの冷えすぎ防止のために毛糸のパンツが売れているそうです。人間は皆一様ではなく、環境への関心も違います。そんな人たちを一度に環境問題へと振り向かせることは現実的には無理だと思います。しかし我々のビジネスは間違いなく環境問題に貢献しています。それにしては、地味な企業であると感じます。環境社会の縁の下の力持ちで終わっては何となく勿体ない気がします。もっと前に出て行くべきだと思います。ヤンキースの松井然り、ダイエット食品然り、注目されることで、初めて関心が高まる気がします。環境に対し我々が抱える大きな問題と、問題を解決し、環境へ貢献している我々のビジネスをもっと広く知ってもらうことで、環境問題への関心が高まるのでは、そうなれば良いなと思います。
香川県の不法投棄で苦しんでいる豊島と、不法投棄廃棄物を受入れる直島との対応の差が露骨である中で、不法投棄現場を元通りに戻そうとの首尾一貫した理念の元に活動されている豊島住民の皆様には頭が下がる思いです。高齢化や風評被害等があるが、今後とも運動を続けて欲しいと思います。
 また、不法投棄現場近くの海岸は死の海であったが、拡散防止対策を施した後は2年もしないうちに海岸が元に戻りつつあるとの話を聞いて、自然の持つ力は偉大であることを改めて思いました。この自然を守るためにも、環境装置メーカーの従業員として環境のキーワードを常に意識しながら業務を遂行していきたいと思います。
人間の欲望を満たしつつ、循環型社会を実現することは困難の極みであると痛感する。その中で自らの製品を1品でも多く、1カ所でも多く納めることが、今できる限りの我々の使命だと思う。
リサイクルするためには、(リサイクル品を購入する場合も、破棄する場合も)多額の費用がかかるが、これらの費用を極力ケチらない。特に破棄する場合、ケチることによって、豊島問題のように不法投棄が行われ、最終的に税金などによって、元々必要であった以上に費用がかかり、環境への影響も多大なものとなる。


おわりに


 都市部から排出された産業廃棄物の不法投棄により、自然豊かな豊島が瀕死の被害を受けた今回の事件。シートで覆われた投棄現場を視察しただけでは当時の状況を図り知ることはできませんが、案内をしてくれた多田さん、そして住民会議の前川さんの思いを聴いて、事件の重大さとあまりにも大きな代償を伴った教訓としての重さを感じ取ることができました。
 豊島事件が解決した後も、全国で産業廃棄物の不法投棄は後を絶ちません。「不法投棄」という悪質な犯罪が、都市部の豊かさのつけとして目の届きにくい地方で発生しているという現実から眼をさけてはいけません。さらにもう一歩踏み込んでゴミを大量に発生させる仕組みを変えていくことに知恵とお金を投入すべきなのかも知れません。本当の「持続可能な循環型社会」の創出のために「環境ソリューション」を社名に冠した企業で働く私たちは今何をすべきなのでしょうか。
 次回第5ステージでは、最近の気候変動の原因であるといわれる地球温暖化をテーマとして、その防止のために企業はどう考え何をすべきかについてディスカッションをする予定です。あまりのテーマの大きさにどのような答えがビジョンとしてとりまとめられるのかは、私自身にも未だに描き切れていませんが、私たちのユニオンが「考働する集団」であることを理念として掲げていることを忘れずに取り組んでいきたいと決意しています。
以上